4時26分

自分のベッドで寝ていると、ふと目が覚める。寝心地が悪いと思ったら、ベッドの上半分にほとんど横になるようにして寝ていた。当然下半身はベッドの外だ。そりゃ身体も痛いわなと思い身体を起こそうと思うが、ふと人の気配。足元に弟が座っていた。身体が硬…

メロン

あれ、なんかいいにおい。そう言って和美さんは僕の耳の後ろらへんの髪に顔を近付けた。くすぐったいような心地いいような背中がざわっとする感覚と共に、女の子特有のなんともいえないやわらかいにおいが僕を包む。なんか甘いお菓子みたいなにおいだね。な…

ダウニー

コートを羽織るとフードのファーから彼女のにおいがする。びっくりして見ると真横が彼女のコート。彼女のにおいというか煙草の臭いを嫌う彼女が愛用しているファブリーズのにおいなんだろうけど、彼女を抱きしめたときに薫るから、僕の中では彼女のにおい。…

新大阪

アジアカップの決勝戦を見ていた。 少し汗ばんだ下半身が気持ち悪くて目が覚めた。プリキュアの左上の時計がクリアに見えるので、あぁコンタクト付けっぱなしで寝てしまったのだと気付く。もそもそと炬燵から這い出て洗面所でコンタクトを外すとレンズが濁っ…

スピンオフ企画

誰かが書いた文章のスピンオフを別の人が書いてそれを繋げて繋げて大きなオムニバスになるようなのしようぜ。何番煎じかもしれないけど。久々にそういうのいいと思うんだけどどうかな。

非通知

エアコンが切れた部屋で半裸で汗だくで寝ていたら携帯電話が鳴る。非通知番号。電話の向こうで若い女の声。寝ぼけながらもあぁそういえば前にも一度誰だか分かる?分からない。分かんない?分からないから名乗ってよ。本当に分からないの?という会話を知ら…

男女間の友情

それって男女間の友情ってやつですか!? 創作鶏料理のチェーン店で向かい側に座る女の子が言う。僕は一瞬ことばの意味が読み取れず止まる。ほんの少しの間をおいてううんどうだろうとことばを濁す。 それって男女って関係あるの?結局は人対人なんだから単…

眼鏡

学校へ向かう途中の地下道で学校の先生を見つける。白いパーカにいつものジーンズ。いつもの鞄からは白いコードが延び、見えないけれどきっと耳へ。缶コーヒーを飲みながら。あれはきっとボスのカフェオレだな。そんなことよりも眼鏡。黒のセルフレーム。眼…

いいじゃないか

毎晩君からのメール待ち続ける僕とラジオから声がする。モニタの明かりが目に痛い。僕は少し目をつぶるとすぐにも寝てしまいそうだから、ほんの少しだけ目をつぶる。つぶるだったかつむるだったか気になりブラウザを起動させる。まだ仕事してるのかなとラジ…

僕とホットケーキ

僕はホットケーキが好きだ。どのくらい好きかというと、市販のホットケーキミックスを使わず、自分で調合した粉を使い、焼く。何度も何度も試作を重ね、より良い調合を求めた。僕は理系だから、なんて森博嗣みたいなことは言わないけれど、僕にとってホット…

ドラマ性のない日々。

金曜の晩に繭子が訪ねてくる。黒のパンツにストライプのシャツ。上に白いユニクロのパーカを羽織っているものだから、教育実習生みたいに見えると繭子に伝えると、照れたような困ったような怒ったような複雑な顔を僕に向けた。僕は彼女のその不思議な表情が…

重たい本

11時55発の最終電車に僕は乗る。 御堂筋線からの乗換客が駅員に急かされ足早に乗り込んでくる。あっという間に座席は埋まり、僕の横には少し汚れた紺の作業着を着た男がすでに舟を漕いでいる。 僕は手に持っていた分厚いノベルスを取り出し読み始める。先月…

図書館

僕は図書館で本を借りる。カウンタの向こうの香坂さんは僕のことに気付かずに、黙々とパソコンに数字を打ち込んでいる。眼鏡の香坂さんは大学を卒業したての21歳で僕より7つ年上。彼女は図書館の近くのグレーのマンションの203号室に一人で住んでいて、僕は…

純粋なもの

純粋だと思っていたものが実はとんでもなく醜いものだったことは往々にあることで、僕はそういうものに滅法弱い。

斉藤春美

昨日の夜にもチェックしたはずなのに新着メールが3件もある。そのどちらも春美さんからで、うち2件は受信日が30秒しか違わない。見なくても内容は見当が付いたが毎回クリックしてしまう。斜め読みして返信しないことも多い。彼女は毎日メールを寄越す。一…

七夕の夜、

FMラジオが得意気に音楽を鳴らす。時の銀河に裂かれてもとはよく言ったもんだと仕事の手を止めて一息つく。書きかけの図面を一旦下げてブラウザのショートカットをダブルクリック。検索バーに文字を打ち込む。見覚えのあるアルバムジャケットが目に留まり、…

消失点

喫煙コーナーから外を見る。向かいのビルと向かいのビルの隙間を赤い電車がちらりと横切る。7階のフロアから1780ミリ上がったところに僕の視点。向かいのビルも遠くのビルも僕の正面に線が延びる。線は一点に集まる。世界が線で構成されて、デジタルなイメ…

発疹

皮膚が荒れ赤く腫れた彼女の指は、少しだけ熱かった。かゆくて大変。彼女は笑って僕を見る。病院行った方がいいんじゃないの?何度目かの僕の言葉に、そのうち治るから大丈夫よと言い続けていた彼女は初めて、うんと言った。 幸いにも僕の家の近くは大きな病…

ギター少女と禁煙セラピー

禁煙セラピーを読んで禁煙中のヒロイチは、禁煙中で手持ち無沙汰なのでギターを弾きますとギターを弾いた。暗くなったの部屋に彼のギターが響き渡る。ねぇなにか曲は弾けないの。たったひとりの観客だったタカシは赤い低いソファにもたれながらそう言った。…

坂の多いこの町で、暮らしてもう何年になるだろう。 僕は何人目かの女の子の手を引いて坂を上る。僕が嫌いなこの急な坂を海が見えるから好きと彼女は言う。何度も見慣れた景色が不思議と違った風に見えて、単純な自分が少し可笑しい。どうして笑っているのと…

携帯のお天気アイコンが雪マークを示しており、朝からぎょっとする。布団に包まったままカーテンを少しずらして外を見ると、向かいの駐車場が白く染まっており空には雪が舞っていた。 時計の針は8時50分。幾らなんでもそろそろ起きないと学校に遅刻してしま…

寝息

電話の向こうの寝息を聴いて、子どもみたいと7つも上のひとを想う。 携帯電話が176分話してたよと御節介にも僕に伝える。3時間の間に僕らは仕事の愚痴をこぼし、今日食べたものを報告して、面白かった本を勧めて、お互いの好きなところを絶賛し合って、血液…

フランクな肉棒

口紅なんかつけなくたって十分に赤いふっくらとした繭子の唇が「お」と発音したときの形に丸く開き、熱を持ったそれにそっと口付ける。あたたかいねと口を少し離して繭子が言う。僕はなぜか興奮して少し勃起してそれが繭子に知れたんじゃないかと思って顔が…

お風呂場血まみれファック

たららんたららんたららんらんたららんたららんらんらららららんお風呂が沸きました。給湯栓を閉めてください。ノーリツの給湯器がうきうきした声で僕にそう言う。僕はキーボードの上でわきわき動く手を止めて、彼女の言うとおり風呂場へ行き赤い色のついた…

44 世界の終末はどのように訪れると思いますか。

世界の終末なんて訪れないんじゃないかと思った。それでも4月23日はやってきてあと5時間で世界が終わる。僕は僕の狭いアパートの青いベッドで亜佐美を抱いて、亜佐美は赤く腫れた目を閉じ今は寝息を立てている。世界が終わるときをベッドの上で愛する人を抱…

煙草

ベッドに腰掛け煙草を吸う。隣の繭子は何も言わずじっと僕を見ている。僕は部屋の隅に脱ぎ散らかした服を見てすうっと長く煙を吐く。二人分の散乱した服を見ても、ベッドに座る自分たちを見てもいまいち実感が沸かなかった。 繭子は僕の前では煙草は吸わない…

51 「ファンタジー」とは?

この部屋には2種類の時間が流れていて、朝日が昇るころにお昼ご飯を食べたりする。 僕は2時間ほど仮眠しただけで先程から仕事を続けている。目が冴えているのは、仮眠をしたせいではなく、白い時計が午後1時20分を指しているからかもしれない。部屋に唯…

エキセントリックな缶のバッグと世界誕生の瞬間と文庫と白いCDR9枚とグッチとクリちゃんと豆とバラとアドベンチャーワールドとコーヒーと嬉しい気持ちと素敵なベルトと水と牛乳とたくさんの発泡酒とたらチーズサンド(死ぬほど好物)と本3冊とCD3枚と昨日買ったCDと煙草と青いライター2つ。

部屋の所々にあるたくさんのものを見つけて驚く。あ、外国の紙幣2枚とコイン2個も貰った。

目が覚めると7時50分で、僕は朝ごはんを食べる間もなく8時9分発の電車に飛び乗った。 家からホームまで数分走っただけだが息は荒く、日頃の運動不足を悔やんだ。通勤時間真っ只中の混雑した車内の熱気が今の僕には暑苦しく、10月も終わりに近付いているとい…

恋って楽しい!

僕の横で半裸の繭子は「あのねあのね、すきなひとができたの」と嬉しそうに少し照れながら言った。僕は価値観の違いにあっけに取られながらあぁそうとだけ言った。 すきなひとは今月はじめから通っているパソコン教室の講師でと繭子の話は続いた。勿論僕は話…