憎しみスープ

 守るとか救うとかは所詮ファンタジー小説の中だけで通用する言葉。そういうの、片方のエゴでしかないもの。彼女はそう言い放った。そんな悲しいこと言うなよと一応言い返してみたが返事は無かった。
 
 僕は彼女を守りたいと思った。思ったからそう伝えた。彼女は笑っただけだった。決してこころを開かない彼女の内を知りたいと思った。今思えばそれらすべてが僕のエゴだったのだろう。
 
 彼女が死んだと知ったのは彼女が死んで2ヵ月後のことだった。彼女の親類から直接聞いたわけではなく共通の知人から噂話のような形で聞いた。彼女の親類を含め知人に僕たちの関係を知る者はいなかった。一緒にいる時間が長かっただけで、特別な関係などではなかったのかもしれない。ただ彼女が死んだことを知るのに2ヵ月も必要だったことが悲しかった。でもこれも僕のエゴなんだと彼女は言うのだろう。
 
 結局僕は彼女が何を望んでいたのか解らなかった。彼女にはいつも笑ってほしいと思った。僕の考えていることはすべてエゴなのかもしれない。