2005-05-01から1ヶ月間の記事一覧

サイレン

消防のサイレンの音で目が覚めた。ここに越してきて4ヶ月が過ぎようとしているけれど、サイレンの音を聞いたのは初めてだった。 実家はここから電車で1時間の隣町にある。近所に消防団のポンプ車の車庫があるから、サイレンが鳴るととてもうるさい。遠くに…

散らばる散らばる

散らばったこころを拾い集めて大急ぎでかたちにしたから、家に帰る途中で崩れてしまった。東京メトロの中で崩れてしまったこころをさっきみたいに大慌てでかき集めた。いくつか遠くに飛んでいってしまったこころが見えたけど、午後九時の地下鉄は大層混んで…

憎しみスープ

守るとか救うとかは所詮ファンタジー小説の中だけで通用する言葉。そういうの、片方のエゴでしかないもの。彼女はそう言い放った。そんな悲しいこと言うなよと一応言い返してみたが返事は無かった。 僕は彼女を守りたいと思った。思ったからそう伝えた。彼女…

実録

「お前ってなんか男友達みたいだよな」 携帯電話越しのその一言に思わずブチっと切れかけたものの、5年という社会生活で培った精神統一方法を使い「よく言われる」と能面の表情で応える。「男に生まれた方が良かったんじゃないの」ごめんこの一言で能面脱ぎ…

水銀灯

真由子は色の白い女であった。化粧気の無い真白な頬に触れたいと思ったことは度々あったが、その度に工具の油で汚れた自分の黒い指を慌てて引込めた。そんなときいつも真由子はにこりとこちらを見るのだった。彼女の汚れを知らない無垢な笑顔を見ていると、…

weezer

(インターホンが鳴る。深夜1時半。モニタ越しに見慣れた顔の男。今日はめがねをかけていない。解除ボタンでオートロックの扉を開ける。1分もかからないうちに再度インターホン。ドアの向こうに男の影を確認する前にロックを開ける。何度も見慣れた顔の男。…

不感症

こういうことはもうやめにするわ。へぇまたそれはどうして。だってこういうことすることに対して、何も、感じないんだもの、それってすごくだめなことだと思うわ。へぇ根本的なところはだめって思わず、君自身の考え方がだめって思うからなんだ。そうよ、だ…