カズミ

 こんにちわ。そう言って僕の前に和美は座った。目の前に現れた和美はカズミほどかわいくなかった。正直少しがっかりしたが、緑のスカーフのセーラー服を着た彼女は、14才の僕にとっては十分過ぎるくらい大人の女性に見えた。本物の和美はカズミより、よく笑いよく驚きよくしゃべった。
 
 さて。和美は最後のポテトを食べ終えると、カラオケ行こっか。そう言って席を立った。僕は当然断る理由も無かったし、とにかくそのときはかなり舞い上がってしまっていたので、うん、とぼそりと言って彼女の後を追った。
 
 平日の4時のジャンカラは学生で溢れていた。和美は慣れた様子で予約を済ませ20分待ちだってーと言って店を出た。1号線沿いを並んで歩きながらもう一度お互いの自己紹介をした。和美は小さい。153.8センチ。165センチしかない僕と並んでも和美は小さかった。兄弟の話や、学校の話、いつもメールやネットで話している内容とそう変わらない雑談をだらだら話した。20分はすぐに過ぎ、カラオケに戻ると5階の部屋を案内された。2人でカラオケに来るなんて初めてで、4人も入ればぎゅうぎゅうの狭い部屋だった。部屋の照明は暗い。L型のソファに並んで座る。意外と近い。よーし歌うよー和美は早速歌いだす。途中で店員がウーロン茶とジンジャエールを持ってきた。腕と腕が触れ合いそうなくらい接近して座っていた僕らを店員がじろじろ見ている気がして、ものすごい勢いで飲み物を奪い取ってしまった。和美の後、僕も何とか得意のミスチルを歌うが、右腕に触れる和美の感触と薄暗い部屋の照明が気になって気になって散々だった。和美はその後ジュディマリを歌い、僕はブランキーを入れた。ねぇキスしたことないんだっけ?突然和美は言った。僕は飲んでいたジンジャエールを思わず噴出しそうになった。この間のメールでそういう話をしたのは事実だが、こう面と向かって聞かれると返答に困ってしまう。おずおずと僕が困っていると、和美はしよっかとニヤリと笑い、顔を近づけた。僕はそれだけで思考が止まってしまったが、和美はそのまま止まらず僕にそっとキスをした。