お隣の松井さんの家の2階、多分長男の秀一君の部屋から、女の悲鳴が聞こえる。毎週日曜日、時刻は3時頃が多い。初めて声を聞いたときは何事かと思いびっくりして窓を開けた。そのときから度々、悲鳴が聞こえるようになった。それがセックスの歓喜の声だと気付いたのはつい最近だった。僕の部屋と秀一君の部屋とは2メートルほど離れているのではっきりとは聞き取れないが、しかし確実に悲鳴が聞こえる。僕は青いカーテンはそのまま、わざと窓を開けベッドに寝そべる。いつの頃からかその悲鳴を聞きながら自慰をするようになっていた。隣の僕の部屋にまで聞こえるのだから相当大声で叫んでいるに違いないが、そんな激しいセックスを2メートル先でしていると思うと興奮した。
 
 ある日、コンビニから帰ってくると僕の隣の家、秀一君の家の前に制服の女の子が立っていた。秀一君は僕より確か6つ年上で京都の大学に通っていたはず。目の前の女の子は髪の長い大人しそうな女の子だった。グレーのワンピースはちゃんとひざ丈で3つ折のソックスに黒い革靴で、僕が逆立ちしたって入れるはずのない仏教系の進学校(そこは女子高だから僕が秀才だったところで入れないけれど)の制服。彼女は隣の家の門に手をかける僕に気付いて微笑み小さく会釈した。僕は機械みたいにぎこちなく挨拶する。松井さんちのドアが開き、秀一君が立っていた。