緊縛

 土曜日、起きると時間は12時で、駅まで自転車で10分だったけれど、とても焦った。急いでシャワーを浴び、髪を乾かした。ジーパンにシャツを着て、クローゼットの中から赤い紐を取り出してカバンに詰め込み念のため、コンドームを数個入れておいた。はじめてのデートだからっていい感じにならないとは限らない。中3のとき、年上の高校生と付き合ってて、ゴムがないからセックスしてもらえなかったことがあった。セックスしたいならゴムくらい用意しときなさいよと酷く罵られたのがトラウマだった。
 
 大急ぎで駅に向かうと、早苗ちゃんがいた。黒いコートに膝丈のグレーのチェックのスカート。こげ茶色のブーツを履いていた。学校で見慣れれているはずの早苗ちゃんがとてもかわいく見えた。僕たちは高校生カップルらしく梅田で映画を観て、HEPファイブの観覧車に乗って、ポムの樹でオムライスを食べた。外へ出るともう暗くて、他愛もない話をしながら人通りの多いホワイティを並んで歩いていた。人がいないほうへ人がいない方へと思って歩いていた所為か新阪急ビルを抜け第4ビルのほうへ来た。地下街は寂れた飲食店を除き、シャッターが半分以上下りていた。僕は話を続けながら、早苗ちゃんの手を引き、非常階段へと向かう。
 
 非常階段は落書きではなくいわゆるアートなイラストで埋め尽くされていて独特の異様な雰囲気がある。よくカップルがいちゃついているのを見たことがある。サッカー部の先輩が非常階段でセックスしたのを自慢気に話していたのを思い出した。踊り場を曲がってすぐの、地下街からは見えないようにして僕は階段に座った。早苗ちゃんも座った。最近あまり学校で話す機会がなかったからか、無言になるのが怖かったからか、話は尽きなかった。
 
 僕はたしか、月9の内野聖陽について話しているときカバンから赤い紐を取り出して早苗ちゃんの手首に巻いた。早苗ちゃんはちょっとびっくりしていたけれど笑っていた。黒いコートを脱がして白いシャツを着た早苗ちゃんの身体に赤い紐を巻いていった。さすがに早苗ちゃんは顔をしかめていたけれど僕はお構いなしに黙々と早苗ちゃんを縛った。最後に赤い紐を非常階段の手すりにぐるぐると巻きつけた。
  
 
どう?
…どうって(苦笑
誰かに見られたらどうするのよ。
見つかる前に終わるよ。それに、見せてあげればいいんじゃないかな?
え。
 
 
 僕は急いでベルトを外し、驚いている早苗ちゃんの髪を掴んで僕を咥えさせた。早苗ちゃんは僕をめいっぱい咥えたままもがいたりしていた。時々早苗ちゃんの歯が当たって痛かったので頬を叩いたら、嗚咽しながら泣き出した。それを見て僕はとても心が痛んだ。ごめんねごめんねと言いながら早苗ちゃんの喉の奥を突いて射精した。泣きじゃくっている早苗ちゃんの咥内で余韻に浸っていると、上階から人の話し声が聞こえた。僕は急いでズボンを引き上げ、早苗ちゃんに黒いコートを着せると、何事もなかったように横に座り、泣いている早苗ちゃんの肩を抱き頭を撫でた。話し声がぴたりと止み、無言で僕らの横を20代後半くらいのカップルが通り過ぎた。彼らが見えなくなってから、危なかったねと早苗ちゃんに言うと、彼女は泣きながら階段に僕の精液を吐き出した。緑色の階段に早苗ちゃんの唾液の混ざった僕の精液が広がった。前にここで中身の入ったピンクのコンドームを見かけたときも、なかなかシュールだと思ったけれど、これはこれでおもしろいなと思った。でも今日はコンドームを持ってきていたので、せっかくだから使うことにした。