私生活の安売

 私生活の安売というサイトがある。ググればすぐに出てくるかなりの大手サイトだ。そこではその名のとおり様々な人々の私生活が売買されている。その私生活をどう使うかは購入者の自由である。実を言うと、このサイトの各日記もその私生活の安売というサイトで購入したエピソードを使っている。
 
 他人の私生活を買うと書くと、なにやら犯罪の匂いがしないでもないが、実際はそういうことではなく、無駄に細かい個人日記といった感じである。例えば、先日買ったエピソードで書いたのは「繭子」という文章。これは主人公にした男の元彼女の出品だった。私が書いた文章では省かれたが、あの後、ふたりは無事復縁し、今では笑い話になっているそうだ。というかあの「繭子」事件はもう2年も前の話であれから半年後、彼らは結婚し来月には子どもが生まれるという。名前は繭子。もちろん、ライブチャットの繭子は、売られていた私生活上では「あやか」という名前だった。そういう、過去の私生活が「業界最安値!!」という売り文句で売られている。値段は1エピソードにつき100円〜500円。繭子は150円だった。
 
 出品者は自分の私生活が、購入者によってどう料理されるのかが面白いらしい。同じエピソードで3つ4つのまったく違うものになったことを自分のブログで紹介している人もいるくらいだ。そんなわけで私は以前より(というか私生活の安売というサイトを発見したからこそこうして文章を書けているわけなのだけれど)このサイトを利用させてもらっている。
 
 創作物を扱う人にとってこのサイトを使っていると公言するのはタブーとされている。タブーというのは言いすぎで、元ネタがあるものを使って、あたかも全オリジナルのように発表するのはどうかという反対意見も多い。しかし二次創作という目で見れば、とても興味深い題材だと思うし、前述したようにどう料理されるのかを楽しみに待っている出品者が多いのも事実。かくゆう私も何点かエピソードを出品させてもらっている。売れ行きはぼちぼちといったところ。面白いことに派手な面白いエピソードよりも、スーパーに行ったら鶏肉がもも肉とむね肉の2種類あって鍋に入れるのはどっちがいいかと悩み、横にいた主婦に尋ねたところどっちでもいいとのことだったので安かったむね肉でうどんすきを作ったらどうも鍋のとり肉ではない歯ごたえだったという、はっきり言ってどうでもいいエピソードの方がよく売れる。ちなみにこのとりにくエピソードは100円で出品中で、既に3件売れた。