42 人間のクローンについてあなたの考えは。

 ねぇ、あなたはどう思う?どう思うってそれ、誰に尋ねているの?誰って、クローンである貴方に尋ねているの。僕はクローンだからその問題についてどうこう議論できる立場にはないな。あら、お堅いひと。君が選んだ男だろう?ええ、そうね私と、私の姉が選んだ男。クローンが容認されていなかったら、君はマサキを奪っていたかい?うーん、どうかな、姉のことが好きなマサキが好きだったの。それじゃぁクローンの僕の立場がないな。あなたのことは好きよ、それは本当。社交辞令でも真に受けておくよ。昔から姉のものをなんでも欲しがったわ。もの扱いね。姉と同じ洋服が欲しかったし姉と同じピアノを習った。それで、姉と同じ夫が欲しくなった?姉は何でもできて私はいつも二番煎じだった。そりゃ妹だからね。姉がはじめてマサキを連れてきたとき、彼は私の夫になるべきひとだって、思った。少々電波気味だね。でもすぐに彼らは婚約したわ。その腹いせで僕を?ええ、そう。嬉しい話ではないね。
 ねぇクローンってどんな感じ?どうって僕は君らオリジナルと同じだと思っている。あなたはマサキ?僕はマサキのクローンだけれど、造られたのはたった5年前だし32歳の彼と共に生活をしたことがない。もう5年になるのね。育ってきた環境が違うから人格は別物になる。同じなのはDNAだけってわけね。うん、不満かい?あなたに不満はないわ。そりゃどうも。でもねいくらDNAが同じだからって別の人格のひとを造って何の役に立つのかしら。昔は、臓器移植要員として研究されていたらしいんだけどね。今じゃペット扱い。そりゃひどい。他人事みたいに言うのね。僕はユリのペットかい?ペットを家族のように扱うひともいるのよ?はいはい。あなたのことは好きよ、それは本当。僕はマサキじゃないけれど。もう誰だって関係ないわ。随分と投げやりだね。育ってきた環境によって人格が形成されるように5年も一緒にいたらあなたはもうマサキのクローンじゃないわ。そう思ってくれると産まれた甲斐があるね。で、人間のクローンについてあなたの考えは?