僕は倫子の描く絵がとても好きだった。僕は倫子自身をとても好きだった。
僕が好きだったのは彼女か彼女の才能か。
彼女と別れて数年後、手にした洋書に彼女の黒い絵を見つけたとき、僕の中の何かが溶けた。
僕は倫子の描く絵がとても好きだった。僕らは離れて歩くことを選んだが、こうして倫子の絵は僕の目に入る。僕はこの絵が好きだ。
倫子は今でも絵を描き続け、それは変わらず素晴らしい。
僕はそれを、離れた場所から賞賛する。
その声はきっと以前のようには倫子に届かないだろう。それでも倫子は絵を描き続ける。
それで十分なんじゃないかと最近思う。