煙草

 ベッドに腰掛け煙草を吸う。隣の繭子は何も言わずじっと僕を見ている。僕は部屋の隅に脱ぎ散らかした服を見てすうっと長く煙を吐く。二人分の散乱した服を見ても、ベッドに座る自分たちを見てもいまいち実感が沸かなかった。
 繭子は僕の前では煙草は吸わない。僕は煙草を吸う女性が別に嫌いではなかったし、彼女が喫煙者であることも知っている。灰皿やライターが常備されたこの部屋に、他の男の影がない訳ではなかったが僕はそれには触れずにいる。
 短くなった煙草を消す。繭子はまだこちらをじっと見ている。