ギター少女と禁煙セラピー

 禁煙セラピーを読んで禁煙中のヒロイチは、禁煙中で手持ち無沙汰なのでギターを弾きますとギターを弾いた。暗くなったの部屋に彼のギターが響き渡る。ねぇなにか曲は弾けないの。たったひとりの観客だったタカシは赤い低いソファにもたれながらそう言った。ヒロイチは何も返さず小さな曲をひとつ弾く。小さな練習曲のようなその曲はぽろりぽろりと音を浮かばせタカシはそっと目を閉じる。
 耳に入る音の粒を飲んでしまわないよう頭の奥に貯めて貯めて貯めて、ギターの音が頭の中で渦巻くようにタカシはギターを聴く。ヒロイチのギターは決して上手ではないけれど、とても心地が良かった。