粉々

粉々に砕け散った僕のこころは、会社の電話線を通じていくつか君の元へ迷い込んだ。幼い君はそれが僕のこころの破片であることに気が付かないまま、携帯電話の赤いボタンを押した。粉々に砕け散ってしかも破片をなくした僕はひとり放心状態のままパソコンのディスプレイを見つめ、時計を見つめ、我に返る。終電。足りないこころを拾い集めてなんとかかたちにしてみたけれど、いくつかパーツが足りないからそれはとても不恰好なかたちにしかならなかった。それでもぼくはその不恰好なこころと真っ赤に腫れた両目を引きずって駅へ急ぐ。震える手で携帯電話を握り締めながら、ドアの外を覗く。黒い壁が延々と延々と延々。ドアの外にマンションの明かりが見える頃、ぼくのこころは不恰好ながらなんとかかたちになってきた。そうしてどんどん最初のかたちとは違うものにすがたを変えて、なんとか取り繕って僕は君にメールを打つ。